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ブレトン・ウッズ体制が終わり、市場は変動相場制の時代へ

1971年8月にニクソン大統領が発表した経済政策をきっかけに、為替市場の固定相場制は変動相場制へ移行していきました。しかし、ニクソン・ショックの直後にいきなり変動相場制が定着したわけではありません。主要通貨の切り上げを巡る交渉など、様々な紆余曲折がありました。

その最たる例が「スミソニアン協定」です。スミソニアン協定はどのような協定だったのか、そしてスミソニアン合意が締結された後に世界の為替市場はどのように変化していったのか、具体的に見ていきましょう。

スミソニアン協定について

スミソニアン協定とは、1971年12月18日にアメリカ合衆国ワシントンD.C.のスミソニアン協会本部ビルで開催された協定のことです。同年8月に起きたニクソン・ショックにより大混乱に陥った世界の為替市場を安定化させるため、G10(10か国蔵相・中銀総裁会議)が一堂に会し、通貨調整に関する協議が行われました。

1944年にアメリカ合衆国ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで開かれたブレトン・ウッズ会議にて金本位制に基づく固定相場制が締結されて以来、米ドルは世界の基軸通貨として絶対的な地位を確立していました。しかし.ベトナム戦争などをきっかけにアメリカ経済が悪化するにつれ.金本位制の維持が極めて困難になっていきました。

そこで、リチャード・ニクソン大統領はドルと金との交換を停止し.アメリカ経済の回復に躍起になります。それまで圧倒的な人気を誇っていた金融資産である金を取引できなくなったことで世界中の金融関係者が大混乱に陥り.強烈なドル売りが殺到する事態となってしまったからです。

スミソニアン協定では.固定相場制を維持するために各国の政府や中央銀行が協調介入することの容認・外国為替の変動幅を1%から2.25%に拡大・アメリカの輸入課徴金の即時撤廃・ドルに対する主要国通貨の切り上げなどが提唱されました。欧州圏の通貨の切り上げ率は5%前後にとどまりましたが.アメリカに目をつけられていた日本円は1ドル360円から308円へ16%以上も切り上げられてしまいました。

スミソニアン体制が崩壊するまで

ニクソン・ショック後いくつかの通貨ではすでに変動相場制が導入されていたものの.スミソニアン協定により固定相場制に復帰することになりました。

スミソニアン協定によって相場混乱の事態は解決するかに思われましたが、現実とは厳しいものです。協定成立後も米ドルの不安定さは回復せず.各主要国通貨は依然として何度も通貨危機に見舞われていました。あまりの惨状に、為替市場を閉鎖せざるを得ない時期まであったほどです。

そして1973年2月にアメリカがドルを切り下げると、耐えかねた日本では田中角栄政権が変動相場制への移行を決定。さらに各主要国も全面的に変動相場制へ移行していきます。

こうしてスミソニアン体制は締結からわずか1年あまりで崩壊し.およそ30年間にわたって続いてきたブレトン・ウッズ会議以来の固定相場制が完全に終焉を迎えました。現在では当たり前となった市場の需給によって為替レートが決定する変動相場制は、壮絶な市場混乱の果てに錬成されたのです。

スミソニアン合意後の為替相場

スミソニアン協定により決定した各主要国通貨のレートは以下の通りです。

最も切り上げ率が低かったのが.6.36%のスイスフランでした。(3.84CHF)7.48%のイタリアリラ(581.50ITL)、8.57%の英ポンド(0.38GBP)、11.57%のオランダギルダー(3.24NLG)などが続き、16.88%の日本円(308JPY)がダントツのトップでした。

せっかくの協定もドル・金の兌換復活がなかなか実現しなかったため、ドル売り、欧州通貨・日本円買いの流れを止めることが出来ず、相場は大混乱。1973年にはとうとう各国の市場が変動相場制へ移行していきます。

70年代のうちはかろうじて200円台後半を堅守していたUSD/JPYの為替レートは、80年代に入ってカーターショックを切っ掛けに徐々に円高傾向を強めていきます。100円台後半から200円台中盤あたりを乱高下した後、ドル安を進めるプラザ合意を契機に一気に円高へ。一時1ドル70円台後半という歴史的安値をつけた後は100円台まで持ち直す円安傾向に戻りました。

しかし、ニクソン・ショックやスミソニアン体制頃の為替に比べれば圧倒的に顕著な長期円高相場が続いています。再び1ドル300円台の円安相場に戻る可能性は極めて低いですが、1ドル100円を挟む数十円の値幅でも的確なタイミングで売買を繰り返せば十分に利益を上げることが可能です。

30 3月 2016

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