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- 黄金株とは?その活用法とメリット・デメリットをご紹介
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みなさんは「黄金株」という言葉を聞いたことがありますか? 黄金のように価値の高い株という意味にも聞こえますし、あるいはこれから莫大な利益を生むことが期待されている株のような印象も受けますよね。
残念ながら黄金株はそのようなに利益を生むような魅力的な株のことではありません。
黄金株とは英語の『GOLDEN SHARE』を直訳したもので、会社の経営や存続を確実に維持するための手段として認められているものになります。
日本の会社法では認められた9つある「種類株」と呼ばれる株式の一種で、会社のオーナーが事業継承するときなどに信頼のおける人物に対して発行されるものです。
同時に、敵対的買収から会社を守るために発行するケースもあります。
一般的に株についての知識というと金融取引のルールやその銘柄のバックグラウンドなど、どちらかというと投資に関係した株の取引に関る知識が中心になりますが、もっと深くまで理解し、解釈をするにはそれだけでは不十分です。
案外発行される株の種類を知っておくことで投資んための分析にも役立ちますし、いざ自分が会社を経営する立場になったときに活きてくる立派な勉強にもなります。
そこで今回は、会社経営をする際、事業継承や敵対的買収に遭う可能性への対処としての黄金株の存在や意味、そのメリット・デメリットを詳しく紹介していきます。
目次
日本でも認められるようになった黄金株は9つのある種類株式のひとつ
では、そもそも黄金株はどのように登場したのかを説明します。
まず、黄金株は大きな目的としてふたつの機能が存在します。
ひとつめは、事業を継承する際に拒否権をつけることで会社が新経営者の手によって方向性を誤らないようにします。
極端な例を出すと、現経営者が後継者に会社を譲る際に、その後継者がまだ経営者としては未熟だった場合、会社経営の判断を誤るなどで会社が立ちゆかなくなる可能性があるとします。
そんなときに拒否権をつけた黄金株をあらかじめ保有しておくことで、後継者が下手な行動に出ようとしたときに拒否ができるというものです。
もうひとつは、買収をされてしまいそうな株主総会において、決議事項に対して拒否権を行使できる機能になります。
譲渡制限をつけることもでき、例えば譲渡に関しては取締役会などの承認を必要とするようにしておけば、水面下で敵対的買収が進んでほかの株を買い占められたとしても、黄金株だけは守られ、買収者の好き勝手にすることは不可能になります。
信頼のおける人物を株主にしておくことで会社の買収を実質的に阻止できるのです。
会社の業務内容によっては買収されることで多大な影響を人々や国におよぼす場合もあります。そんなときは特に黄金株は有効です。
1980年代にイギリスの交通通信民営化で黄金株をつけたことで注目を浴びたこともあります。交通や通信などは国の要になるわけですので、わけのわからない外国企業に買収され、国を乗っ取られることを防いだわけです。
日本においては2006年に会社法により種類株式制度が導入されました。その際、9種類の種類株式を発行できるようになりました。
会社法第108条で定められており、以下のものがあります。実務上の呼称は別にありますが、法的には9種類です。これらは株式に権利を付与できるもので、会社法ではこれらの内容を自由に組み合わせて会社独自の株式を発行することも認められています。
9つある種類株式
- 剰余金の配当規定(1号)
- 残余財産の分配規定(2号)
- 議決権制限規定(3号)
- 譲渡制限規定(4号)
- 取得請求権規定(5号)
- 取得条項規定(6号)
- 全部取得条項規定(7号)
- 拒否権規定(8号)
- 役員選任権規定(9号)
剰余金配当地位の優劣を定めたもので、ほかの株より優先的な地位が認められた株を実務上では優先株式、標準的なものを普通株式、劣後的なものは劣後株式あるいは後配株式と呼びます。
優先株はほかに多数議決権株式、功労株などがあり、劣後株式には混合株式というのもあります。
会社清算後に残った財産の分配される地位の優劣を定めたものです。これにも優先株式や劣後株式があります。優先株式の株主は投下資本の回収が確実になるメリットがあります。
株主総会の議決権の全部あるいは一部を制限する規定です。一般的には優先株式に議決権制限をつけ、流通性を高めながら買収対策にします。
譲渡には会社の承認が必要であることを定める規定です。この規定の中では実務上、譲渡制限株式と呼ばれます。
特定の事情をあらかじめ条件に盛り込み、例えば株式取得の対価に現金、新株予約権、社債が設定できる償還株式などがあります。転換株式というのもあり、議決権制限のある優先株式に取得請求権をつけ、取得対価として普通株式交付を定めます。そうすれば優先株主は保有優先株式を議決権つきの普通株式に転換でき、会社経営に参加できるようになるなど様々な活用方法があります。
旧商法では強制転換条項付株式とも呼ばれていたもので、先の取得請求権は株主がアクションを起こすものが、この取得条項規定では会社がアクションを起こし、取得対価を設定して株式を発行できます。
全部取得条項付株式と実務上は呼ばれるもので、株主総会の決議で会社が株式のすべてを取得できるように規定しています。少数の株主を追い出す場合(スクイーズアウト)に利用されます。
会社法改訂によって種類株式のひとつになったもので、これが黄金株になります。
種類株主総会で取締役あるいは監査役を選任する規定のある株式です。
種類株は異なった権利や制限をつけるように規定した株式ですが、その中の8号になる拒否権規定で発行された株式のことを黄金株と呼びます。
黄金株を持つ株主は株主総会で議決された内容のすべて、もしくは一部を拒否することができます。
黄金株を持つ株主がたった1人でも決議されたものを拒否したり可決したりすることができるので、極端には黄金株の発行は1株だけで充分です。それだけで会社を敵対的買収から守ることができるということです。
拒否権付種類株式=黄金株はどんな場面でどのように活用できるか
拒否権付種類株式=黄金株はどんなケースにおいて活用することで役に立ってくるのでしょうか。
黄金株の活用は敵対的買収から守ることのほかにもいろいろな使い道があって、特に経営のかじ取りを後継者に譲るとき、あるいは後継者の間違った経営方針や手法を正していく必要があるときに、会社の席を完全に譲る前に特に黄金株の効果や魅力を活用できます。
もともと、黄金株というのは敵対的買収から会社を守るものではなく、事業承継を円滑にするために発行され始めた株式です。
例えば、会社の経営権のすべてを新しい後継者に譲渡することに対し、場合によっては多少の不安が残ってしまうケースも想像に難くありません。
そんなネガティブな感情が現経営者側に強くあったりすると、いざ事業承継をしようと考えたときに、若干でも決断が遅れることもあるかもしれません。そんなケースではスピードが大切な時期に継承のための準備が間に合わず、さらに大変な思いをするということも起こりうるでしょう。
そんなときに拒否権をつけた種類株式の黄金株を発行することで、新後継者には譲れない部分だけを譲らず、最低限の経営権だけを譲渡することができるようになります。
もっと具体的に説明すると、例えば創業者がゼロから始めた事業というのは大きくなればなるほど愛着があるものです。しかし、創業者もいつかは歳を取り、現場を離れるときがやってきます。
ただ、いきなり後継者に経営のすべてを任せるにしても、しばらくは、あるいは後継者が経営者トップとして育つまでは重要な決定について口を出したいこともあるでしょう。
そんなときに黄金株を発行して、さらに創業者が自分をが黄金株の保有者とすることで、事業継承が様々な意味でスムーズに行うことができるようになります。
黄金株は要するに、使い方次第で敵対的買収から会社を守ったり、後継者を育てる、あるいは事業の継承を円滑に行うということなど、様々な対処法が実施できる株式なのです。
黄金株の発行について経営者なら誰でも簡単に発行ができるものなのか
株主総会の議決に対する拒否権がある黄金株は、使い方次第で経営者や役員などに効果的な力が与えられることになります。敵対的買収に対抗することもできるわけですが、逆にいえば、黄金株を役員などが発行すれば、内部で会社の乗っ取りを企てることもできるかもしれません。ですので、黄金株はそういった危険を回避するためにも、誰でも簡単に発行できるようにはなっていません。
拒否権付種類株式=黄金株を発行するには、定款で種類株式を発行することを定めなければなりません。
よって、黄金株発行に際してはまずは株主総会を開催し特別決議として、定款の変更の決議を行います。決議の条件としては議決権を持つ株主の半数以上が出席し、出席株主の3分2以上の賛成を得ることです。
このときに各種類株式の内容と各種類株式ごとの発行可能株式総数を決定します。そして法務局に変更登記の申請を行って承認されれば黄金株の発行になります。
このように、黄金株の発行は決して難しくはありませんが、経営者や役員個人で自由に発行できるものではなく、種類株式について定めた会社法に則って黄金株は発行され、他者に対してもその効果が認められるのです。
拒否権がつき効果的に経営に参画できるという特徴がある黄金株ですが、だからといって黄金株だけがほかの通常の株式と違い評価額が高くなるわけではありません。評価額は通常の株式と同じで、黄金株だから特別な価値を持つ、ということはありません。あくまでも黄金株も1株は1株としてカウントされます。
株主総会での取引内容
定款で黄金株の機能を定める場合、あまり細かくしすぎるとかえって危ない
増資する際に普通の株式を追加発行すると、資金調達はできても経営者の議決権比率が大幅に下がってしまい、場合によっては会社経営には好ましくない状況になりえます。そこで効果的なのが黄金株です。議決権を制限する条項を盛り込んだ株式にすれば経営者の議決権比率に影響ないままに資金調達が可能になります。
黄金株は会社法第108条1項8号で認められている種類株式のひとつです。株主総会における決議を拒否することができ、どれだけ多数の賛成を得たとしても決議事項は効力なしとされます。
黄金株はたった1株でも拒否権を有するのですが、、拒否権内容を広範囲に定めてしまうと会社の意思決定が強く縛られてしまい、逆に健全な経営から遠ざかってしまいます。ですので、M&A(合併・買収)や代表取締役の選解任といった会社に影響の大きい事項のみ定めるのが一般的です。
また、1株でも拒否権があるわけですので、第三者に黄金株が渡ってしまう危険性を懸念し、譲渡制限付にするのも一般的です。種類株式は9種類あり、それを自由に組み合わせて発行することが可能なので、様々な条件をつけることが可能です。
そんな黄金株は定款で種類株式を発行することを定めるため、株主総会で特別決議をえなければ発行できません。株主の半数以上が参加する総会にて出席者の3分2以上の賛成を得れば拒否権付種類株式の発行を可能とする定款変更ができます。その際、定款に定めなければならない内容は下記です。
・当該拒否権付種類株式の株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする事項(108条2項8号イ)
・当該種類株式総会の決議を必要とする条件を定めるときはその条件(108条2項8号ロ)
敵対的買収から会社を守るために定款盛り込むべき防衛策とはなに?
黄金株は今の経営者が後継者に対してある程度様子を見たいときに活用できる、会社の存続のために重要な種類株式になります。この黄金株は別の使い方としては会社が敵対的買収をされそうになっている際にもその効果を発揮します。会社を守るために活用できるのです。
ただ、元々継承するために黄金株を設定した場合、定款の内容によっては敵対的買収を回避することはできません。黄金株を敵対的買収の防衛策として機能させるには、実は事前に定款に黄金株を消却できないことを定めておく必要があるのです。もし株主総会決議で黄金株を消却できることにしておいた場合、買収者が買収成功後に黄金株を消却してしまう恐れがあるので気をつけなければなりません。
つまり、今後会社経営において起こりうることを阻止するため、黄金株を発行するときには、その機能を定款にしっかりと盛り込んでおかなければなりません。先のように消却できるようになっている黄金株は買収者に対して買収行動自体を規制できるわけですが、万が一買収が成功してしまえばその後の買収者の行動を規制できず、拒否権なども発動できないのですから。
ですが、しっかりとその点も見越して定款に盛り込んでおくと、黄金株主は買収成功後でも拒否権を発動できるので、敵対的買収に対してやり放題にさせないということが可能になります。実際的にもそのような黄金株が存在していれば買収者にとってはリスクになるので、敵対的買収する側も慎重になってきます。
ただ、定款に盛り込む内容を細かく決めすぎてもまた経営に対して問題が増えてきますので、重要な部分に拒否権をつけるようにするなど気をつけるべきです。
黄金株の発行には大きなデメリットもあるので注意して検討するべきワケとは
黄金株は会社の継承や敵対的買収に対し、活用方法次第で非常に有益なものになることはおわかりいただけているかと思います。ですが、実はトラブルやリスクも多いのが黄金株の裏の顔でもあります。
ここまでで黄金株が事業承継をスムーズにするひとつの有効な手段だということを説明してきました。ですが、黄金株はとても強力な拒否権を持っているので、黄金株があることで逆に事業承継が進まないケースもあるということも説明してきました。例えば、拒否権を細かく設定して、元の経営者が黄金株を保有することで起こりうる事態です。
黄金株が持つ拒否権は定款で定めることができます。そこでどんなことにも拒否権を発動できるようにしてしまうと、結局会社のかじ取りをしているのは先代だ、というネガティブな感情を後継者が持つことになりかねません。そうなると後継者の心情としても実際の経営面でも支障が生じる可能性が出てきます。
ですので、黄金株の機能を定款に記す際には譲るべきところはきちんと譲り、どうしても譲れない、または後継者に対して不安のある部分のみ拒否権を使えるようにしておくことが重要です。
それから、もし将来上場を考えている場合、黄金株の発行は控えた方がいいです。というのは、黄金株がとても強力な権利を持つことから、ほかの一般株主の権利を不当に制限することが懸念されるためです。実際に東京証券取引所の見解としても「原則として黄金株の発行を控えるように」というものがあります。
黄金株の大きなデメリットとして敵対的買収者に譲渡される可能性がある
それから、黄金株のデメリットは前項の継承などに関する拒否権だけに留まりません。敵対的買収を防衛するための機能が逆に仇になることもありえます。それは、黄金株が敵対的買収の買収者側に渡ってしまうことです。
会社を守るための拒否権などをつけ、たった1株でも株主総会の決議を覆すことができるのが黄金株ですが、もし買収者側にこの株が渡ってしまった場合、その権利が買収者のものとなってしまい、まったく意味がないどころか、敵対的買収は大成功となってしまいます。
黄金株が敵対する側に渡ってしまうケースとしては様々なシチュエーションが考えられますが、最も可能性として高くなるのが、黄金株の保有者が死亡した場合です。
黄金株は後継者が意図しない行動に出ることを防ぎ、会社の存続を維持するためのものでもありますが、これが保有者が死亡するなどで起こる問題によってそれどころではなくなるのです。実は黄金株の発行について最も注意しなければいけないのが保有者が死亡するなどしたときの相続なのです。
黄金株は預金や不動産と同じく相続の対象となります。黄金株を発行する会社経営者がなにもしないということは考えられませんが、万が一対策をなにもせずにいる、あるいは親族やほかの役員らが黄金株の相続にあまり明るくないとその結果、意図しない人に黄金株が相続されることもありえるのです。もし後継者として考えていた人以外に黄金株が相続されると、事業承継がうまくいかなかったり、最悪の場合では会社の経営がうまくいかなくなることも考えられます。あるいは、敵対的買収をする側に相続されてしまったら。もしくは相続人が敵対側に黄金株を売却してしまったら。黄金株は相続問題に充分に気をつけなければならないのです。
この問題への対策として考えられるのが「遺言書」の作成と黄金株を「取得条項付種類株式」として発行する方法の2つです。「遺言書」は株式に関らずその他の財産にも関る重要なものです。黄金株とは関係なく、会社経営者であれば検討しておくべき事項です。
もうひとつの「取得条項付種類株」はその株式を取得する条件を定めることができるもので、これにより、黄金株を保有する株主の死亡を条件として、会社が黄金株を取得できるようにしておくことで、実質的には一代限りの黄金株の発行が可能となるのです。
本来の黄金株の機能やメリットを考えれば「取得条項付種類株式」の方法で黄金株を発行することが多いようです。
黄金株で起こりうるデメリットは常に把握して対策を講じること
黄金株とは拒否権付種類株で非常に大きな権限を持ちます。たった1株でも株主総会での決定を否決できるわけですから、その力は絶大です。非常に強力な黄金株だからこそ、その発行には慎重さが求められます。会社を存続させるためによかれと思ってあらゆる場面を想定して条件をつけていくと逆効果になることもあるからです。
ですので、黄金株の機能を定款に定めるときは、どうしても譲れない部分や後継者に対して少しの不安がある場合など事業承継をスムーズにする目的に絞って条件を決める方がよさそうです。ただ、その際に上場を視野にいれている場合、日本の市場においては黄金株を発行しない方がいいとされています。というのは、黄金株は1株で拒否権を発動できるので、力が強いわけです。そのため、ほかの一般株主にも与えられている権利があるはずなのに、黄金株があることで一般株主の決定権が著しく弱くなってしまうからです。
また黄金株による拒否権を発動できる範囲を慎重に選ぶ必要があります。会社の存続にかかわる部分や、どうしても譲れない事業についてのみにして、基本的には後継者にすべての経営を任せるのがスムーズです。あらゆる条件でがんじがらめにすると、後継者からすれば、結局経営しているのは自分ではないという気持ちになり、最終的に経営は破綻に向かってしまいます。
そして、黄金株を発行する際には取得条項を付けることも重要です。黄金株の相続がなされたときの無用なトラブルを避けるために、保有者の死亡を条件に会社が黄金株を取得することで実質一代限りの黄金株にすることが可能です。意図しない人物に渡って経営がうまくいかなくなったり、その人が敵対的買収者に黄金株を譲渡してしまうこともありえます。会社を買収から守るためにも、発効時に相続問題も考えておくべきなのです。
以上のように、黄金株を発行する際には、その効力のおよ範囲を十分検討し、相続の問題までよく考えて発行することをおすすめします。
日本や海外における黄金株に対する現状は追い風なのか逆風なのか
日本で黄金株が認められたのは2006年になってからです。東京証券取引所もあまり黄金株を認めたくないような状況ですが、上場企業が友好的な株主に対して発行した黄金株が敵対的買収者に譲渡される恐れが出てきたこともあり、2006年に会社法第108条が施行され、譲渡制限をつけた黄金株を発行することが認められたのです。
そんな日本における黄金株の事例は案外少なく、特に上場企業の事例は2004年に上場した国際石油開発(現国際石油開発帝石)が外資による買収を避けるために経済産業大臣に黄金株を保有させているというくらいしかありません。
上場企業以外の日本の黄金株では、UFJ銀行が三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合するときに三井住友フィナンシャルグループからの買収を避けるため、黄金株を発行したことがあります。ほかにも上場前のベンチャー企業が資金調達のためにベンチャー・キャピタルに対して黄金株を発行するケースもありました。
外国における黄金株の事例で有名なのは1980年代のイギリス、サッチャー政権が国営企業の民営化を進めたときに空港や通信などの国防上において重要な事業を外国企業に買収されることを防ぐために発行しています。これは政府保有株に拒否権を付与した始まりとされています。
ほかにはアメリカでインターネット企業の創業者らが普通株の何倍もの議決権をつけた複数議決権付株式を上場以前に発行し、上場後も経営権を確保することがあるようです。ただ、やはり黄金株が持つ権利の強さに対してアメリカの主要株式取引所は上場後に黄金株発行を禁止しています。ヨーロッパでも各国取引所が黄金株制度の廃止を求めています。
黄金株に知っておくことは会社経営者でなくても大切なことなのか
結局、黄金株は強い権利を持つことから、後継者の決定権をある程度抑制し、敵対的買収から会社を守るという、経営者側にとってはこの上ない機能をつけることのできる株式になります。しかし、便利である一方でデメリットもあり、逆に継承がうまくいかなかったり、敵対的買収の相手側に黄金株が渡ってしまえば致命的な問題になります。
同時に、黄金株保有者に対して強い権利が与えられる一方で、一般的な普通株を多数保有する株主たちの権利がないがしろにされてしまいます。一般的な会社経営では株式を多く保有するほど発言権が強くなるわけですが、黄金株を発行している会社であると、たった1株で一般株主の発言権が覆されてしまうわけです。そうなると、黄金株があることで会社を応援してくれる株主たちが離れていってしまいます。
実際に日本の取引所もそうですし、海外の取引所も黄金株の制度を廃止するべきであるという声も上がっているようです。黄金株は逆風になりつつありますが、いずれにせよ、黄金株がある以上、これについての知識は必要です。株式投資の観点からすれば、黄金株だからといって価格的には価値は上がりません。ですが、投資の分析を行う際にはこれを知っているのと知らないのでは結果がまったく変わっていきます。
今後、会社を経営するかしないかは別にして、株に関わるのであれば黄金株を始め、日本の9つの種類株式は理解しておきましょう。