• 株主、証券会社、投資家それぞれにメリットのあるオーバーアロットメント
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2002年に導入された需給関係の悪化を防ぐ制度で発動されるとどうなる?

2017年3月29日

正直、聞きなれないオーバーアロットメントという制度をご存知ですか?恥ずかしながら筆者は知りませんでした。

しかし、オーバーアロットメントについて調べていくと、株主、証券会社、投資家それぞれにメリットのある制度であることが判明しました。

公開される前の株は、上場後の値上がりがかなり期待されています。
そんな株を手に入れることができたらうれしいですよね。

上場前の株は申し込んだ人の中から抽選で購入する権利がもらえるのですが、オーバーアロットメントが発動すると、その確率が上がる、という仕組みなのです。

これだけでは理解しにくいと思いますので、これから詳しく説明していきますね。

オーバーアロットメントとはいったい何?

新規上場して株を公開しようする場合、上場前に公募や売出しを行い、投資家に株を配分することがあります。

「公募」とは会社が新規に発行して市場から資金を調達するための株のことです。それに対して「売出し」は公開前の既存の株主が売り出す株のことで、会社の資金にはなりません。

その際の株の価格を決める際には「入札方式」や「ブックビルディング方式」などの方法がありますが、いずれにせよ、公募や売出し時の株数と目安価格の仮条件が付けられます。

さて、公募や売出した株売数よりも多くの需要があった場合はどうなるでしょうか?

「公開前の株に申し込んだけれど、買えなかった」という投資家が増えることになりますよね?このように、想定以上の買い注文(需要)があった場合にオーバーアロットメントが行われることになります。

オーバーアロットメントになるとなにが変わるの?

公開前の株の公募や売出しの条件に対して想定以上の買い注文が投資家からあった場合にオーバーアロットメントになるのでした。オーバーアロットメントになると、証券会社がその会社の大株主などから株を一部借りて、その分を投資家に売ることになります。

供給される株を超えた需要の分を追加で割り当てる、ということになります。

需要の過熱を抑制する効果がある

想定以上の投資家からの申し込みがある状態は供給にたいして需要が大きすぎる状態です。この状態のまま上場し株式を購入すると、その後の株価が急騰したりと市場が混乱するおそれもあります。

そこで、大きすぎる需要に対して供給を増やすことで需要の過熱を抑制するための仕組みがオーバーアロットメントです。過熱した買いの意欲を冷やすことになるので「冷やし玉」とも呼ばれます

借りた株は最終的にはどうなる?

先ほど、オーバーアロットメントでは証券会社が大株主などから株を一時的に借りて、投資家に割り当てると説明しました。
この株は一時的に借りているものなので当然返さなければいけませんよね。
株を返す方法には2種類あり、それぞれ「グリーンシューオプション」「シンジケートカバー取引」があります。

株を新規に公開すると新規の株の価格が決定します。証券会社は借りた株をすでに投資家に売ってしまっているので、公開後の価格によってどのように返すかが変わってきます。

市場価格が投資家に割当てた価格よりも高い場合、売った価格より高い市場価格で無理に買い戻して株主に返却する必要はありません。この場合は「グリーンシューオプション」を行使します。

「グリーンシューオプション」とは、投資家に割当てた時と同じ条件で株を買い取って、その分の金額を株主に支払い返却したことにするものです。

反対に市場価格が下がってしまったばあい、市場にある安い株を購入し、株主に返します。これを「シンジケートカバー取引」と呼びます。

オーバーアロットメントにはどんなメリットがある?

オーバーアロットメントは需給関係の調整のためにされるものです。需要の過熱を冷やすために、IPO前の株を既存の大株主などから借りて投資家に配分するため、結果的に供給量が増え、需要の過熱を冷やす効果があります。

このように需給のバランスを調整し、株価の急騰を防ぐという大きなメリットがありますが、その他にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

株価形成でもメリットがある

オーバーアロットメントによって需給バランスを調整されているので市場での株価は安定しやすくなります。IPO後の株価は上昇することが多いですが急激な上昇を抑え、適正な株価の形成がなされます。

また、逆に株価が下がってしまった場合、「シンジケートカバー取引」によって証券会社によってオーバーアロットメント分の株が購入されるので株価は結果としては上昇することになります。株価の「下支え」というメリットも期待できます。

株主、証券会社、投資家それぞれのメリットとは?

需給のバランスを調整することによる株価形成のメリットの他にも株を貸した株主、株を借りてオーバーアロットメントをした証券会社、そして投資家にはそれぞれどんなメリットが考えられるでしょう。

株を貸した株主にしてみるとせっかく上場後に株価が上がっても「グリーンシューオプション」で決まった金額しかもらえません。
これはデメリットとも考えられますが、株価の「下支え」効果によりその後の株価の堅実な上昇が期待できます。
大株主によって株価の上昇は歓迎すべきことでしょう。

証券会社は「シンジケートカバー取引」をした場合では売買差額分の利益を得ることができます。
「グリーンシューオプション」の場合でも投資家に売った金額と同額を支払えばいいので損をすることはありません。

では、投資家にとってオーバーアロットメントにはどんなメリットがあるでしょう。

通常IPO株は事前に申し込みをしその後の抽選などによって割り当てが決まります。

オーバーアロットメントは事前に供給の量が増やされるわけですから、抽選に当たる確率が高まるのでIPO後にその株を取得しやすくなるというメリットがあるのです。

いいことだらけのオーバーアロットメントだが・・・

いいことだらけのオーバーアロットメントなので、どの会社も積極的に行えばよさそうなものですが、注意しなければならないこともあります。

まず、そもそも需給関係の悪化を抑制するための仕組みですので、需要が想定を上回らなければ意味がありません。また需要が多ければどんどんオーバーアロットメントで追加的に株を割り当てられるかというとそうではありません。

当初の想定の15%を超えてオーバーアロットメントできないことになっています。

オーバーアロットメントのメリットまとめ

オーバーアロットメントはこれからIPOしようとする会社や増資のために新規に株を発行したり、株を売出したりする際に、需要が想定を超える分を追加的に供給する仕組みです。

具体的には大株主などから証券会社が株を借りて投資家に配分するわけですが、これにより、大株主、証券会社、投資家の3者ともにメリットがあります。

オーバーアロットメントの最も大きな役割は需要の過熱による需給関係の悪化を防ぐ、というものです。

これにより株価の急騰を防ぐのと同時に株価を下支えすることで株価形成をしていくのです。

著者情報
自虐に突っ走る投資初心者。腹八分目を肝に銘じつつ、欲と恐れと戦いながらどこまで我慢できるか毎日チキンレース繰り広げてます。

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