当サイトには広告・プロモーションが含まれています。 当サイトでは、複数企業と提携し情報を提供する広告収益モデルで運営しています。 当サイトを経由しサービスや商品のお申込みが発生した場合、各企業から報酬を受け取る場合がございます。
ソーシャルレンディングの歴史

ソーシャルレンディング市場の歴史と今後

ソーシャルレンディングは現在、日本国内で大きな盛り上がりを見せていますが、ソーシャルレンディングの起源は海外にあり、その運営スキームにはそれぞれ特徴があります。

今回は、日本の市場にあったソーシャルレンディングがどのような過程を経て成立したかというポイントについて、法律や規制の影響も踏まえて解説していきます。

世界のソーシャルレンディングについて学びたい方も、この記事を読めばその仕組みの基本は理解いただけると思います。

海外のソーシャルレンディングの歴史

ソーシャルレンディングが一番最初に誕生したのは、2002年にイギリスで開始されたVirginMoneyです。カリスマ起業家のリチャード・ブランソン率いるヴァージン・レコードのグループで、サービス内容としては知りあい同士限定の個人間融資サービスとして誕生しています。不特定多数の人が参加できる今現在のソーシャルレンディングよりはクローズドな環境で利用できるサービスだったようです。

今現在のソーシャルレンディングの原型となる世界初のサービスは2005年にイギリスで創業したZopaという企業です。ZopaはP2Pレンディングと呼ばれる個人間の融資プラットフォームで、世界的に著名なVCであるベンチマークやベッセマーなどから支援を受けています。Zopaに続いて、2006年頃からアメリカでソーシャルレンディングサービスの創業が相次ぎます。2006年にサンフランシスコでProsper、2007年には同じくサンフランシスコでLending Clubが事業を開始しました。

その後、オンライン上で資金需要のある個人や企業と、融資金利を求める投資家をマッチングするソーシャルレンディングの仕組みは、その利便性と実績をもって世界中に拡大します。初期のソーシャルレンディングでは、Zopaが行ったように、車の購入代金や学費の支払いなどに充てるためにソーシャルレンディングで借り入れを行う個人に対して、個人投資家が資金を工面するケースが多かったため、Peer to Peerレンディング、略してP2Pレンディングとも呼ばれていました。しかし、世界中でのマーケットの拡大に伴い、借り手に事業者、貸し手に金融機関や機関投資家などが増え、現在では「マーケットプレイスレンディング」という名で呼ばれることが多いようです。

日本のソーシャルレンディングの歴史

日本で最初のソーシャルレンディングサイトの誕生は2008年で、現在も国内最大の規模で事業を運営しているmaneoでした。その後2009年にAQUSH、2011年にSBIソーシャルレンディングがサービスの提供を開始します。日本のソーシャルレンディングサイトは、海外のソーシャルレンディングサイトと異なり融資型クラウドファンディングと呼ばれる形態をとっています。

海外のソーシャルレンディングサイトでは、先述のようにマーケットプレイスレンディングという形態をとっており、純粋にボロワーと呼ばれる借り手と、レンダーと呼ばれる投資家をマッチングする仕組みとなっています。一方、これについては後程詳細に解説しますが、国内では貸金業法の規制により、海外で行われているソーシャルレンディングのようにマーケットプレイス型のマッチングを行うことはできず、日本の法律に即した形で匿名投資組合というファンドを通して疑似的にこれを再現する手法をとっています。

maneoやAQUSH、SBIソーシャルレンディングの創業当初は、海外ソーシャルレンディングサイトと同様にP2Pレンディングを標榜しており、個人向けの無担保融資案件の募集が投資家向けに行われていました。

初期の国内ソーシャルレンディングサイトではデフォルトが頻発

しかし、この個人向け無担保融資案件を投資家に提供し続けた結果、maneoやSBIソーシャルレンディングなどの国内事業者においてはデフォルトが頻発しました。返済不能になるボロワーが多数だったようです。そのために各ソーシャルレンディング事業者はボロワーの与信審査を非常に厳しいものにしました。審査を厳しくすれば、確かにデフォルト率は下がります。

しかし、審査の厳格化により募集できる案件が少なくなり、ソーシャルレンディングの投資家は投資機会を奪われる形となりました。現在もmaneoのサイト上に当時の募集案件が掲載されていますが、株式やFXの運用資金をソーシャルレンディングで募集したいという無謀極まりない案件なども掲載されており、デフォルトが多発してしまったのもうなずける内容となっています。

現在国内ではほぼ100%法人向け融資

その後、個人向け融資の難しさに直面した各ソーシャルレンディング事業者は、不動産事業者なども含む企業向けの融資に軸足をシフトしていきました。

海外では未だにP2Pレンディング型の、個人向け融資を行うソーシャルレンディングは一定の規模を保っていますが、現在国内のソーシャルレンディングサイトではほぼ100%が法人向けの融資案件を取り扱っています。

法人向け融資は安定したパフォーマンスを発揮

個人向け融資でデフォルトを頻発し、投資家に損失を与えてしまったmaneoとSBIソーシャルレンディングですが、法人向け案件の取り扱いを開始してからは1度もデフォルトを起こしていません。国内においては、法人向け融資こそが安定的に投資家にリターンを分配することが可能な形態だったという結論のようです。

過去、maneoにおいて法人からの延滞が生じたことがありますが、案件に設定されていた保証会社が代わりに返済を行うことで、投資家へのリターンの分配は問題なく行われました。このような実績が評価されることで、ソーシャルレンディングの投資家数は拡大を続け、同じように融資総額も増大しています。

日本の投資家は直接融資できない

先述の通り、日本のソーシャルレンディングはマーケットプレイスレンディングではありません。融資型クラウドファンディングという形態をとっています。これは、日本の法規制に沿った独自のスキームで、疑似的にマーケットプレイスレンディングを再現したものになります。

国内では、事業として融資(貸付)を行う場合、貸金業の登録が必要となります。この「事業」としてというのは「反復・継続の意思を貸し手が持つ」という意味です。つまり、仮に個人が貸し手だとしても利益を上げるために繰り返し利子をつけて融資を行う場合には、貸金業法の対象となります。国内で海外のようにマーケットプレイスレンディングのスキームを利用して直接借り手に融資を行うことは、貸金業の資格が必要なのです。

貸金業の登録には純資産が5,000万円以上必要などの厳しい条件があり、ソーシャルレンディングに参加したい投資家全員が登録を行うにはハードルが高すぎて、現実的ではありません。そこで日本では、匿名組合というファンドを利用して融資を行っています。投資家は、直接借り手に融資を行うのではなく、匿名組合への投資をしていることになります。

具体的な流れは以下の通りです。まずソーシャルレンディングで特定の案件に出資を行いたい投資家は、各ソーシャルレンディングの運営会社と匿名投資組合契約を結びます。この契約をもって、ソーシャルレンディング運営会社が組成した匿名組合への出資が行われます。この出資によって、各ソーシャルレンディング運営会社は借り手への融資に必要な資金を調達します。そして運営会社のBS(バランスシート)より融資を行うという流れです。自らのバランスシートに計上される資金を利用して融資を行うことから、海外で主流のマーケットプレイスレンダーと比較してバランスシートレンダーと呼ばれています。

また、各ソーシャルレンディング運営会社は貸金業の免許を取得しているため、借り手への融資が可能となっています。こうして国内ソーシャルレンディングでは個人投資家が貸金業の免許を取得することなく疑似的な融資を行うことが可能になっています。裏を返せば、ソーシャルレンディングの投資家は借り手に直接融資は行っていませんし、融資先から回収を行う際の直接の請求権は持っていません。

貸金業と第二種金融商品取引業

また、各ソーシャルレンディング運営会社は匿名組合スキームを利用して投資家から資金を調達するに当たって、第二種金融商品取引業の登録を行うことが必要になります。金融商品取引業とは、有価証券(株式、公社債など)・デリバティブの販売・勧誘、投資助言、投資運用、顧客資産の管理などを行う業者のことを指し、国内には第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業の二種類が存在します。

日本では不特定多数の投資家から資金を調達する際に、金融商品取引法の規制を受けるため、バランスシートレンダーとして事業を運営するにはこのような資格の取得が必要になってきます。

第二種金融商品取引業の登録には、最低資本金1,000万円以上、法令順守やコンプライアンスの責任者が内部体制として必要になるなどの厳しい条件があり、貸金業の取得と同じくこれを個人投資家が取得するのは現実的ではありません。

マーケットプレイスレンダーとバランスシートレンダー

前述の通り、海外のソーシャルレンディングサイトは、純粋なP2Pレンディングに近いマーケットプレイスレンダー、国内のソーシャルレンディングサイトは運営会社の仲介色が強いバランスシートレンダーとなっています。国内のソーシャルレンディングも、過去はP2Pレンディングと呼ばれている時期がありましたが、実態はP2Pから少し離れているということで、近年そのような表現はあまり使われなくなっています。

このマーケットプレイスレンダーとバランスシートレンダーの双方を、銀行などの既存の金融機関と比較して「オルタナティブレンダー」とも呼びます。オルタナティブレンダーとは、これまでビジネスモデルや体制面の問題で融資が行われてこなかった企業や個人に、AIによるデータ解析やクラウドファンディングによるリスクマネーの供給などをテクノロジーによって実現して、融資を実現してしまう革新的な事業者を指します。彼らはいわゆるFinTechスタートアップであり、中にはオンラインで申し込むと数分で融資が実行されたり、銀行からは審査が下りなかった企業が融資を受けられたりするようです。

マーケットプレイスレンダー

マーケットプレイスレンダーの運営会社の仕事は売り手と買い手をマッチングさせるマーケットプレイスを構築すること、融資先を審査して格付けすること、そして格付けされた債権を投資家にプラットフォーム上で販売すること、投資家へ利息の受け渡しを行うことがメインです。

マーケットプレイスレンダーを採用しているソーシャルレンディングサイトでは、個人投資家が直接貸し手になります。つまりプラットフォームで購入した債券から利息収入を得る形になります。運営会社は貸し手と借り手の双方から手数料を受け取り、営業利益とします。マーケットプレイスレンダーの代表例はZopaやLending Clubが挙げられます。

バランスシートレンダー

一方バランスシートレンダーですが、融資した資金が運営会社のバランスシートの借方に「営業貸付金」という名目で記載されるため、このような名称となっています。バランスシートレンダーを採用しているソーシャルレンディングサイトでは、投資家ではなく運営会社が直接の貸し手となっています。運営会社は融資先から利息収入を回収し、一部を営業利益として差し引いて投資家に利益を還元します。

また、バランスシートレンディングのデメリットとしては、マーケットプレイスレンディングと異なり融資先情報の開示が禁じられています。これは貸金業法の規制によるもので、融資先の名称はもちろんのこと、その個人や企業が特定され得る情報を掲載することはできません。

つまり投資家は、おおまかな業態や融資後の計画は知ることができても、自分の投資した資金がどの個人や企業に使われているのか、その具体名を知ることはできないのです。この融資先の匿名化制限の背景には、貸金業法による融資先保護の意図があるようです。仮にデフォルトが起きた際に、複数の個人投資家が債権者として取り立てを行ったりするとトラブルになりやすいためです。

情報開示がさらなる業界発展のカギ

国内ソーシャルレンディングは成功を収めつつありますが、これまで述べたとおりグローバルスタンダードのソーシャルレンディングではありません。日本の法規制に大きな影響を受けておりガラパゴスの様相を呈しています。その中でもやはり、融資先の開示は早急に行うべき事案でしょう。

投資家がリスクを取って出資を行うのに、融資先の情報が制限され、デューデリジェンスを自ら行うことができないという状況はいびつと言わざるを得ません。実態は各ソーシャルレンディングの運営会社が審査を厳格に運用しているので目立ったデフォルトは起きていないようですが、デフォルトを恐れる余り案件数が頭打ちになってしまう未来も容易に想像できます。

ソーシャルレンディング各社が一丸となり、政府や金融庁に規制緩和を求める運動もはじまっているそうなので、なるべく早期に情報開示が行われることを期待しましょう。

ソーシャルレンディングが果たした功績

それでも、国内ソーシャルレンディング事業者が果たしてきた功績は大きく、投資家にとっては新たな資産運用の選択肢に、資金ニーズのある企業にとっては運転資金や成長資金の新しい調達手法になっています。

例えば、マンション投資や電力発電など、初期投資に多大なコストがかかり、一般の個人投資家には声も掛からないような高利回りの案件に、ソーシャルレンディングを通じてアクセスできるようになりました。こういった案件は、金融資産を数億円以上保有している富裕層や、事業として投資を行っているファンドなどにしかそもそも流通していませんし、アクセスできたとしても最低出資金が足りず、個人で投資を行うことは不可能でした。

実際に、現在の国内ソーシャルレンディングで中心的な役割を果たしているのは、不動産投資のメザニンローンであり、このメザニンローンはこれまで投資ファンドがほぼ独占していました。その多くは非常に利回りも高く、安全性も高い旨味のあるローンなのですが、こういった案件に個人でも投資が行えるというのは、ソーシャルレンディングが普及したおかげと言えるでしょう。

いかがでしたでしょうか。国内ソーシャルレンディングの成り立ちや仕組みを理解いただけたと思います。この記事を読んでソーシャルレンディングでの投資に興味を持った方は、ランキング形式でソーシャルレンディングサイトを比較しているこちらの記事も参考にしてください。

著者情報
投資歴10年。日本株・米国株投資、FX、仮想通貨、不動産、インデックスファンド、なんでも手広く投資中。普段はコツコツ、鉄火場や期待値の高い相場の時だけ大きく張るの…

RELATED